口の中が火傷したようにヒリヒリするのは更年期?口腔乾燥症について解説
2026/08/10
こんにちは。向ヶ丘遊園で開院しております、近藤歯科・院長の近藤です。
口の中が火傷をしたようにヒリヒリするという場合、それは唾液の減少が引き起こす口腔乾燥症(ドライマウス)や、口腔灼熱症候群(バーニングマウス症候群)の可能性があります。
特に中高年の女性においては、更年期に伴うホルモンバランスの変化が原因となっているケースも多く見られます。
今回は、口の中がヒリヒリする病態の特徴や原因、歯科医院で行われる治療法などを解説します。
口内に生じるヒリヒリ感・ピリピリ感の特徴
口内に生じるヒリヒリ感・ピリピリ感は、細かな神経が集まる舌の先端や側縁部、口蓋や唇の粘膜に現れやすいという特徴があります。
人によってはこれらの複数の部位に同時に、あるいは日によって場所を変えて症状が出ることもあります。
このような症状を持つ患者さんに共通して見られる傾向として、食事に集中しているときや、誰かと楽しく会話をしている最中には、痛みが和らぐことがあります。
また、一日の中で症状の強さが変動することが多く、夕方から夜にかけて徐々に痛みが悪化していくというパターンも珍しくありません。
口腔乾燥症(ドライマウス)の原因・症状・治療法
口腔乾燥症(ドライマウス)とは、何らかの理由によって唾液の分泌量が低下したり、唾液の性質そのものが変化したりすることによって、口の中が慢性的に乾いてしまう疾患です。
潤いを失った口腔粘膜は、外部からの些細な刺激に対して敏感になり、粘膜全体にヒリヒリ感や灼熱感が生じやすくなります。
また、唾液による洗浄作用や抗菌作用が働かなくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まるという二次的な健康被害も引き起こされます。
口腔乾燥症を引き起こす原因
口腔乾燥症にはさまざまな要因がありますが、代表的な原因のひとつとして挙げられるのが「薬剤の副作用」です。
医薬品の中には、副交感神経の働きを抑制し、唾液の分泌を一時的に止めてしまう成分が含まれているものも多く、持病のために多くの種類の薬を同時に長期間服用しているご高齢の方などは、これらの薬剤の相互作用によって口の中が乾燥しやすい状態になります。
また、加齢に伴って、唾液を作り出す組織である唾液腺の細胞が萎縮し、機能が低下していくことも原因のひとつです。
ただし、年齢を重ねることだけが深刻な乾燥を招くわけではなく、先述した薬の影響や、糖尿病、腎臓疾患、シェーグレン症候群といった全身の病気、筋力の衰えといった要素が積み重なって発症します。
そのほかにも、水分の摂取不足、口呼吸の習慣、慢性的なストレスや緊張による交感神経の優位なども、口内の潤いを奪うきっかけとなります。
口腔乾燥症の具体的な症状
口腔乾燥症が進行すると、日常生活のあらゆる場面に支障が現れるようになります。
まず、水分が足りないために食べ物が口の中でうまくまとまらず、食べ物を咀嚼して飲み込むことが困難になります。
また、舌や頬の粘膜が滑らかに動かなくなるため、会話の途中で言葉がもつれたり、声が掠れたりする発音の障害も現れます。
さらに、義歯(入れ歯)を使用している方の場合、義歯と歯ぐきの間で唾液がクッションの役割を果たしているため、乾燥によって入れ歯が外れやすくなったり、擦れて痛みや傷ができたりするという問題が生じます。
自浄作用が失われることで口内の細菌が増殖し、口臭や虫歯も悪化しやすくなります。
歯科医院での治療法と潤いを取り戻すケア
歯科医院では、口腔乾燥症によるヒリヒリ感を緩和し、お口の機能を正常に戻すために、原因に応じたアプローチを行います。
治療の基本となるのは、乾燥して傷つきやすくなった粘膜を保護するための保湿ケアです。
診察によって粘膜の状態を確認したうえで保湿ジェルや保湿スプレー、洗口液を処方します。
また、耳の前やあごの下にある唾液腺を優しく刺激する唾液腺マッサージの方法をお伝えすることもあります。
乾燥の度合いが強く、生活に大きな支障が出ている重症のケースでは、唾液の分泌を促す内服薬を処方し、身体の内側から口の中の潤いを取り戻していく薬物療法も組み合わせます。
口腔灼熱症候群(バーニングマウス症候群)と更年期
バーニングマウス症候群とは
口の中にヒリヒリとした灼熱感が続くにもかかわらず、粘膜に赤みや傷、潰瘍などの目に見える異常がない疾患を口腔灼熱症候群(バーニングマウス症候群)と呼びます。
この疾患は、粘膜そのものの異常ではなく、痛みを感じる神経の機能異常が関与する神経障害性疼痛の一種と考えられています。
ホルモンバランスの変化や心理的要因が複雑に関与して発症するとされています。
症状は舌の先端や縁に出やすく、硬口蓋、唇の内側、歯肉に及ぶこともあります。
症状の表現は人によって異なり、火傷のような灼熱感、ピリピリする刺激感、しびれ、かゆみ、実際には乾燥していなくても強い口腔乾燥感を訴えることがあり、部位や強さが日によって変動することもあります。
更年期・閉経と灼熱感の関連性
バーニングマウス症候群は、更年期障害の症状のひとつとして発症するケースが多く、これには女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が急激に低下することが関係していると考えられています。
エストロゲンは、全身の皮膚や口腔内の粘膜のみずみずしさを保す役割を担っているだけでなく、自律神経や痛みをコントロールする神経系を安定させる働きを持っています。
そのため、更年期にこのホルモンが減少すると、口腔粘膜の組織が繊細になり、知覚過敏状態が引き起こされやすくなります。
さらに、脳の痛みを感じるセンサーが過敏になり、通常であれば痛みとして認識しないような微細な刺激や、あるいは刺激が何もない状態であっても、脳が「激しく焼けて痛む」という誤った信号を出してしまうようになります。
ただし、この疾患は女性特有のものというわけではなく、男性であっても、仕事や家庭環境のストレス、神経の不調、慢性的な疲労などが引き起こす神経機能の乱れによって発症することがあります。
歯科医院でのアプローチと複合的な治療法
バーニングマウス症候群は、口内に直接的な原因となる傷がないため、消炎鎮痛剤などを服用しても痛みが治まらないことがほとんどです。
そのため歯科医院では、患者さんの症状の背景にある原因をじっくりと紐解き、症状の軽減と生活の質の改善を目指した複合的な治療計画を立てていきます。
具体的な治療法としては、過敏になって誤作動を起こしている神経の興奮を鎮めるために、微量の抗うつ薬や抗てんかん薬、神経痛を和らげるお薬を処方することがあります。
また、更年期の症状が全身に強く現れている場合は、医科と連携し、減少した女性ホルモンを補う更年期ホルモン補充療法(HRT)の適用を検討することもあります。
口内のヒリヒリ感を誘発するその他の疾患と対処法
口腔乾燥症(ドライマウス)や、口腔灼熱症候群(バーニングマウス症候群)以外にも、口の中にヒリヒリとした痛みや違和感が生じることがあります。
鉄分やビタミンなどの栄養素の欠乏
口の中の粘膜は、全身の組織の中でも特に細胞の生まれ変わり(ターンオーバー)が早い場所です。
特定の栄養素が不足した場合の影響が出るのも早く、粘膜の健康を維持するために不可欠なビタミンB群が慢性的に欠乏すると、舌の表面にある舌乳頭が委縮してわずかな食べ物の接触でも激しいヒリヒリ感や灼熱感を覚えるようになります。
治療にあたっては、どの栄養素がどの程度不足しているかを詳細に調べた上で、欠乏している栄養素を補うためのサプリメントの処方や、効率よく栄養を摂取するための食事指導を行います。
カンジダ菌の過剰増殖による口腔カンジダ症
口の中がピリピリと痛む原因として、口腔内に常在する真菌であるカンジダ菌が異常に増殖する口腔カンジダ症があります。
健康な状態では、免疫機能や唾液の自浄作用によって菌の増殖は抑えられていますが、加齢、体力低下、抗生物質やステロイド薬の長期使用、口腔乾燥などを背景に発症しやすくなります。
この病気にはいくつかの型があり、萎縮性カンジダ症では粘膜が赤くただれたように見え、強い灼熱感やヒリヒリ感を伴うことがあります。
診断では顕微鏡検査などでカンジダ菌の存在を確認し、抗真菌薬の含嗽剤や軟膏を数週間使用して治療します。
歯科材料や日用品による接触アレルギー・刺激反応
口の中の粘膜が特定の物質に対して拒絶反応を起こし、アレルギーや刺激反応としてヒリヒリ感を引き起こしているケースも考えられます。
その原因のひとつが、毎日使用している歯磨き粉や洗口液に含まれる成分です。
泡立ちを良くするために配合されているラウリル硫酸ナトリウムなどの発泡剤や、爽快感を出すための香料、ホワイトニング作用を謳う過酸化物系の成分は、人によっては強い刺激となり、粘膜の表面を荒らす原因となります。
特定の製品で口をゆすいだ直後や、特定の食品を食べた後に毎回決まって症状が悪化するというパターンがある場合は、これらの接触アレルギーや刺激反応の可能性が高いと考えられます。
精神的なストレスや心理的要因による影響
私たちの口の中の感覚は、脳や自律神経の働きと密接に繋がっています。
そのため、仕事や家庭内での慢性的なストレス、将来への強い不安といった心理的な要因が、口の中のヒリヒリ感や灼熱感の引き金となることがあります。
このような場合は、必要に応じて心療内科などと連携しながら、心と身体の両面からアプローチしていきます。
まとめ
口の中が火傷をしたかのようにヒリヒリ・ピリピリと痛む不快な症状は、口腔乾燥症や口腔灼熱症候群(バーニングマウス症候群)、身体に必要な栄養素の欠乏、口腔カンジダ症、薬の副作用、アレルギー反応、精神的ストレスなど、目に見えるものから見えないものまで、複数の要因が複雑に絡み合って発生します。
閉経を迎えた中高年の女性においては、女性ホルモンであるエストロゲンの急激な減少が口腔粘膜の健康や神経のコントロールに影響を及ぼすため、更年期症状のひとつとして灼熱感が現れることもあります。
つらい痛みを軽減するためには、それぞれの原因に応じた治療と、日常生活におけるセルフケアを正しく組み合わせることが大切です。
お口の中の気になるヒリヒリ感や違和感が長引く場合は、まずは歯科医院で詳しい検査を行い、原因を追究しましょう。
監修医・医院情報
監修医:近藤 猛(医療法人社団 新芽会 近藤歯科 院長)
経歴
日本歯科大学卒
医療法人社団 慈皓会 波多野歯科 勤務後
医療法人社団 新芽会 近藤歯科 院長就任
南カリフォルニア大学客員研究員
鶴見大学口腔顎顔面インプラント科専攻生
所属学会
日本口腔インプラント学会
日本歯内療法学会
日本歯科医師会
MAXIS Implant Institute Advance/Basic course 修了
University of Pennsylvania Microsurgery Course 修了
Santa Barbara Dr.Ruddle Advance/Basic Endodontics course 修了
内藤正裕 補綴咬合Ⅰ Ⅱコース修了
医療法人社団 新芽会 近藤歯科:https://kondoh-shika.or.jp/
〒214-0014 川崎市多摩区登戸2043 小田急マルシェ2-3F
電話:044-932-0418
交通アクセス
小田急電鉄小田原線 向ヶ丘遊園駅 徒歩0分

